14話 イノダコーヒー三条支店
京都といえばイノダコーヒーと新福菜館。とも言えなくなった。イノダコーヒーの三条支店が閉店してしまった。
京都の勉強をした。朝食はイノダコーヒーがいいらしい。と、自分を含めて日本中が頷いたので、朝から満席だ。
京の朝食セットは本店にしかないので本店に通っていた。
しばらく待って席に案内され周りを観察すると、円形の8人くらい座れる席には待つことなく座る。
案内もされない。常連専用のようだ。一人の客が多い。しかも喫煙席。
自分も一人なので、次からそこに座ろうと思った。
「いらっしゃいませ」
「あ・・・そこでいいです」
円形のテーブルを指して勝手に座る。祝!自称常連のにわかだ。
「あ・・・」
店員が少し戸惑っている。が、自分はもっと戸惑っている。いかにも京都らしく、よそ者を毛嫌いする空気が場を支配する。
「新聞よむか?」右隣の客が自分を挟んで左隣の客に問いかけながら、新聞を渡す。
びっくりするくらい目の前を新聞が通過する。流石は京都!観光客にはたまらない。
まるで、箒を逆さに立てられたようだ。次に通過するのはお茶漬けかい?
順番は覚えていないが、喫煙席が禁煙になったくらいで、すぐ近くの三条支店に通いだす。
常連としては、いつまでも観光客用の京の朝食を食べている訳にはいかない。実際、常連はコーヒーしか頼まない。
三条支店の最大の特徴は、この美しい円形のカウンター。卓上の灰皿は売店で同じものを購入した。
プロの職人たちが5人くらいカウンターの中でただコーヒーを淹れ続ける。職人の仕事は見ているだけで落ち着く。
氷はカゴに入れても溶けないのか?アイスコーヒーは作る度に味見するんだな。好きでやってる雰囲気が良い。
が、ついに三条支店も禁煙になってしまった。コーヒーと煙草は相性が良い。狭い喫煙室で吸ってもイマイチ。
喫煙室へと立ち上がる度に
「ありがとうございました」
追い出される感じが気まずい。まだ帰らないんですけど。
コロナのせいか、その前からだったか三条支店が閉店した。今では本店には、たまにしか行かなくなった。
京都といえば三条支店。それは間違いない。